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沖縄国際大学 宜野湾の会(編)『大学的沖縄ガイドーこだわりの歩き方』

小笠原やガラパゴスに見られるように、大陸から離れた島嶼環境には非常に面白い生物相が生まれる場合が多い。このような自然環境は、そこに住む人間の生活にももちろん影響を与え、ユニークな文化を生み出す。沖縄は日本にいながらそんな独特な雰囲気を味あわせてくれる、稀有な場所である。

『大学的沖縄ガイド』というタイトルが示しているように、本書は沖縄の旅行ガイドではない。学術的な視点で沖縄の現在と過去を紹介し、この地が抱える問題から魅力までを網羅的に伝えようとする、きわめてマジメな書籍である。その姿勢は第1部「沖縄ナウ」が、基地問題からはじまっていることに端的に現れている。それに続くのは、沖縄の基幹産業である観光の現状と課題、沖縄戦の記憶に関する章である。多大な犠牲者を出した沖縄戦が、本土の人間には遠い島の出来事と認識されていることが、基地問題に対する認識のズレを生んでいるという指摘(p. 62)には、頷かざるを得ない。

第2部「沖縄を楽しむ」では沖縄の祭りや伝統行事、スポーツに焦点を当てている。ハーリーや綱引き、闘牛といった観光にも結びつく行事や、沖縄発祥の格闘技である空手、スポーツツーリズムの現状が紹介されている。気候条件からマリン・スポーツのイメージが強い沖縄だが、マラソンや自転車競技など陸上でも多様なイベントが開催されていることが分かる。

第3部「琉球王国の世界」では、王国時代を中心にした史跡が紹介されている。沖縄を代表する遺跡であるグスク研究の概要、琉球王国の中心・首里城の変遷、本土とは大きく異なる墓制などが取り上げられている。これらの情報は、実際に史跡を訪れるときの基礎知識としても役立つだろう。

学術色が強い本書であるが、第4部「沖縄アラカルト」では食文化や音楽といった、やわらかいトピックも取り上げられている。漠然と「島唄」の名で呼ばれている沖縄民謡が、近代以降の社会変化を強く受けて現代に受け継がれてきたことがよく分かる。

本書は旅行ガイドではないため、ややとっつきにくく感じるかもしれない。しかし沖縄の歴史や文化、現代の様子をしっかりと知りたい場合、本書は格好の情報源になるだろう。巻末に索引が掲載されている点も、本書の有用性を高めている。

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