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コラム

KOKUSAI BUNKAZAI CO.,LTD.

熊本城の崩落石垣を測る

内田恭司・青山宗靖 / Yasuji UCHIDA・Muneyasu AOYAMA

国際文化財株式会社 測量士

仮1_P1020792(加藤神社から)加藤神社から望む天守閣 著者撮影

国際文化財株式会社では、熊本地震により崩落した石垣について、復旧支援の一環として写真計測を実施しました。作業にあたっては、熊本市熊本城調査研究センターと協議の上、期間は2016年5月26~28日の3日間、計測箇所は、飯田丸五階櫓、頬当御門周辺、東・北十八間櫓周辺など10箇所になります。

熊本地震と熊本城 

仮2_IMG_8357飯田丸五階櫓 著者撮影

加藤清正により築城された熊本城は、通説では、慶長6年(1601年)着工、慶長12年(1607年)完成とされています。往時には、大小天守、櫓49などを数え、石垣は上部に大きな反りを持つ「武者返し」と呼ばれるものでした。

 

2016年4月14日(前震)・16日(本震)に発生した熊本地震により、熊本城は石垣の破損64ヶ所、重要文化財の建造物13棟すべて破損(東・北十八間櫓は全壊)などと甚大な被害が発生しています。

計測の方法 

仮3_現況調査_DSCN0732頬当御門周辺(奥は宇土櫓) 著者撮影

すでに、国土地理院などが地上型レーザー計測器で計測を実施していました。ただし、現地踏査をした結果、未計測箇所の飯田丸五階櫓や東・北十八軒櫓周辺は、崩落の範囲が広く、高低差も15m~20mあることから、地上型レーザーでは、設置場所が確保できないことや、レーザーがうまく照射できない可能性がありました。社内で検討した結果、最近、文化財でも活用が進むSfM/MVS技術を利用した写真計測で実施することにしました。

 

SfM/MVSは、コンピュータビジョンと呼ばれる分野(バーチャルリアリティや拡張現実、ロボットの自立制御など)で研究が進む技術です。SfM(Structure from Motion)は、視点の異なる複数の写真から画像の重なりを解析し、3次元モデルを構築する技法です。MVS(Multi-view Stereo)は、SfMで解析したカメラの位置情報や生成した点群をもとに、さらに高密度な点群を生成する方法です。

 

従来までの写真計測は、対象物に対して計画的に重複した写真を取得する必要がありましたが、この方法では、重なり具合を事前に計算する必要がなく、対象物をあらゆる角度から撮影した、多数のデジタル写真をソフトウエア上で解析することで、3次元データを生成しています。さらに、UAV(ドローン、ラジコンヘリコプター)にデジタルカメラを搭載することで、人が立ち入ることができない場所や、自由な角度からのデータ取得を可能としています。3次元データの縮尺は、対象物の複数個所に標定点を設置し、それをトータルステーション(基準位置からの距離と角度を観測する測量機材)で観測・MVS内で処理することにより、付与されます。通常であれば国土地理院が設定した公共座標で観測を行いますが、今回の地震により、地面そのものが数十センチ単位で変動していると予想されたため、任意の座標で観測しました。

 

なお、使用したSfM/MVSのソフトウエアは、PhotoScan(Agisoft社)になります。三次元レーザー計測とPhotoScanで、同一対象物を計測し、比較検証した結果、計測の誤差はプラスマイナス1cm程度であることをあらかじめ確認しています。

作業の手順

作業にあたっては、滞空時間や搭載するカメラの重さを考慮してドローンではなく、エンジン式ラジコンヘリコプターを使用しました。デジタルカメラは、高画質データを取得するために、キャノンのEOS 5D MarkⅡ(2110万画素)とし、写真1枚あたりのデータは5メガバイトほどになります。標定点測量は、トータルステーションで観測しています。

 

具体的な作業手順は、以下のとおりです。

 

1 石垣への標定点の貼り付け(両面テープ)。

2 ラジコンヘリコプターによる撮影。

3 補足で地上からの撮影。

4 標定点の観測・回収。

 

現地での作業は以上になります。撮影した枚数は、約4000枚、標定点は330箇所に及びました。その後、室内で、標定点の座標計算、デジタルデータのソフトウエアによる解析を実施し、3次元モデル10点、立面オルソ画42点を作成しました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA作業手順1 標定点の設置 著者撮影

仮5_4_1_P1000705作業手順2 ラジコンヘリコプターによる撮影 著者撮影

OLYMPUS DIGITAL CAMERA作業手順3 補足写真の撮影 著者撮影

仮6_27_測量_DSCN0807作業手順4 トータルステーションの設置 著者撮影

仮7_26_測量_DSCN0800作業手順4 トータルステーションによる標定点の観測 著者撮影

仮8_Photoscan解析中解析作業 著者撮影

計測の成果 

仮9_5_1_コラム用熊本城平面略図2計測箇所位置図 著者作成

作成した立面オルソ画、3次元モデルの一部を紹介します。

これらのデータは、熊本市へ提供され、今後の復旧調査の基礎資料として活用されています。

仮10_6-1a_飯田丸_27-①s飯田丸五階櫓オルソ画 著者作成

仮11_6-2a_北十八間櫓_21-⑥s北十八間櫓オルソ画 著者作成

29-6櫨方門オルソ画 著者作成

仮13_6-1b_飯田丸_27-3Dモデル飯田丸五階櫓3次元モデル 著者作成

仮14_6-2b_北十八間櫓3Dモデル北十八間櫓3次元モデル 
著者作成

仮15_6-3b_櫨方門_3Dモデル櫨方門3次元モデル 著者作成

公開日:2016年11月10日

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