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東京国立博物館特別展【古代ギリシア 時空を超えた旅】

和田浩一郎 / Koichiro Wada

「文化遺産の世界」編集部員

写真1 特別展会場の平成館

2016年6月21日から、東京国立博物館で特別展「古代ギリシア 時空を超えた旅」が開催されています。古代ギリシアの遺物といえば、アルカイック期(前900~前480年)とそれに続くクラシック期(前480~前323年)の彫刻類が何より有名だと思います。しかし古代ギリシア文化は、西アジア諸文化とも遜色ない時期に産声を上げ、後にはローマにその特徴の多くを受け継いだ長い歴史を持ちます。その間には、上述したような彫刻以外にも、たくさんの注目すべき文物が生み出されました。本特別展が何よりも評価できる点は、特定の時代にフォーカスするのではなく、この文化の全体的な流れを通覧できる展示が意図されていることです。

本特別展では新石器時代からローマ時代までの資料が一同に集められており(新石器時代とヘレニズム期以降の資料はやや乏しいですが)、しかもギリシア各地の博物館が収蔵する、著名な資料が多数含まれています。例えばクレタ島のミノア文化やペロポネソス半島のミュケナイ文化の施文土器、マケドニア王国のエリート墓の副葬品などに大変すばらしい資料があったのが印象的でした。これらの資料はそれぞれの地方博物館に収蔵されているものも多く、ギリシア旅行をしても網羅的に見ることは難しいものです。まとめて日本で見ることができるのは、かなり貴重な機会と言えます。古代文化に関心のある方は、ぜひ訪れていただきたいと思います。