歴史・民俗学
タイの祭り-ロイクラトン-
服喪期間
タイ王国では、2016年10月13日(木)ラマ9世プーミポン・アドゥンヤデート国王陛下が崩御し、国民は1年間の喪に服することになった。これに伴って、ホテル等のイベントやパーティー、コンサートやスポーツ大会などが自粛されることになった。しかしながら、観光業などの経済活動に対する影響を考慮し、30日後からの原則解禁となった。30日後の11月14日は、奇しくも、ロイクラトンの日であった。ロイクラトンは、4月の水掛け祭りソンクラーンとともに、タイ王国を代表する祭りである。2016年は、国王への弔意を表する催しとして、ロイクラトンが開催されることになった。
ロイクラトン(Roy Krathong)
ロイクラトンは、川の水位が最も上がる陰(旧)暦の12月、すなわち、現在の新暦の11月の満月の夜に催される祭りである。バナナの葉で作った小舟クラトンを池や川に浮かべる伝統行事である。いわゆる灯籠流し、精霊流しといわれるものである。ロイクラトンでは、川の女神プラ・メー・コンカーに対して、その年の米の収穫に感謝の祈りを捧げるとともに、自らの罪の汚れを水に流す。ロイクラトンは、タイ全土で同日開催されるものの、現在、さまざまな催しが組み合わされ、各地域で特色のある祭りが繰り広げられている。例えば、ロイクラトンの発祥地とされるスコータイでは、歴史公園を舞台としたスコータイ王朝に関する光と音のミュージカルが有名である。また、チェンマイでは、イーペンと称され、当日の夜から翌朝にかけて、チェンマイ空港発着の飛行機が規制されるほどの無数の熱気球コムローイが夜空に放たれる。
ピマーイのロイクラトン
今回、筆者は、ピマーイのロイクラトンに居合わせることができた。ピマーイでは、例年、ロイクラトンに前後して、スコータイと同じように、ミュージカルやロングボートレースが開催される(映像1)。しかしながら、2016年は、喪服期間中であることから、王の追悼行事と伝統的なロイクラトンに限って行われることになり、恒例のミスコンや花火などの祭典も自粛された(映像2)。午後6時、ワット・サペーンを会場とし、王の追悼行事が行われた。まず、国王の肖像に跪拝し、その後、蝋燭を灯し鎮魂の祈りを捧げながら国王賛歌プレーン・サン・スーン・パ・バーラミーが斉唱された(動画1)。午後7時、隣接するサナーン・ボーラーン池(写真1)をメイン会場として、市内を流れるサペーン川(写真2)等の各地点でクラトンが流された。
写真1 サナーン・ボーラーンのロイクラトン(筆者撮影)
写真2 メーナーム・サンペーンのロイクラトン(筆者撮影)
2016年のロイクラトンの満月は、地球に月が最も接近する68年振りのスーパーフルムーン現象となった。格別に大きな月の下、ラマ9世の精霊が送られたのである(写真3)。
写真3 ワット・サペーンの式典とスーパーフルムーン(筆者撮影)
公開日:2017年1月13日