【リレー企画】小さな展示館 第4回~八尾市立しおんじやま古墳学習館~

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ミュージアムレビュー

【リレー企画】小さな展示館 第4回~八尾市立しおんじやま古墳学習館~

福田 和浩 / Kazuhiro FUKUDA

八尾市立しおんじやま古墳学習館 館長
NPO法人歴史体験サポートセンター楽古 代表理事

はじめに~施設紹介と右肩上がりの!?~

八尾市は、大阪府東部にある人口約27万人の都市。中小企業が数多く集まる街で、都市部のイメージがあるかも知れませんが、私のいる「八尾市立しおんじやま古墳学習館」は大阪府と奈良県との境にある高安山の山麓にあり、地場産業である花農家の畑も多く、自然が残る地域にあります。

しおんじやま古墳航空写真国史跡 心合寺山古墳とその周辺 写真提供:著者(以下同)

施設名に入っている「しおんじやま古墳」は、漢字だと「心合寺山」と書き、少し読みにくいため平仮名表記となっています。古墳自体は5世紀前半、古墳時代中期に造られた全長160mの巨大な前方後円墳で、現在大阪府には、世界文化遺産登録に向けて活動している「百舌鳥・古市古墳群」がありますが、ちょうど同じ時期に造られた古墳です。平成17年4月に、発掘の成果を元に1600年前の古墳時代の姿に墳丘が復元され、古墳のすぐ横にガイダンス施設として学習館もオープンしました。大阪府には巨大な前方後円墳が数多くありますが、160mもある巨大な墳丘を復元しているのはここだけ!です。

国史跡、合寺山古墳国史跡 心合寺山古墳

しおんじやま古墳学習館しおんじやま古墳学習館

このように書くと、とても大きな施設のような気がしますが…確かに古墳の範囲は約30,000㎡もあり、かなり広いのですが、学習館自体は400㎡ほどしかありません。また施設にいるスタッフは通常で2~3名ほど。まさしくこのコラムのテーマである「小さな展示館」です。

 

ただ、施設を運営していく上でそれより問題なのは、当館があくまで心合寺山古墳のガイダンス施設であり、この古墳から見つかった遺物以外の展示物は基本的になく、収蔵庫もないということです。つまり復元された古墳を含めて、一度見ればそれで満足!になりかねない施設なのです。

 

そのような古墳学習館は、開館当初から指定管理制度が導入され、私が代表をしている「NPO法人歴史体験サポートセンター楽古(らっこ)」が管理運営を行い、私が館長を務めています。開館からもうすぐ13年。初年度の来館者数は12,887名でしたが、平成28年度が17,011名となっています。年によって増減はありますが、右肩上がりの傾向で推移しています。数字がすべてではありませんが、当初よりも増加しているのは間違いなく、私たちの運営の成果!?かなと思っています。とにかく今回は、古墳は大きいけれど小さな展示館の取り組みを紹介して、なぜ右肩上がりで入館者数が増えているのか!?そんな秘密を紹介しながら、大阪にある古墳ミュージアムについて知ってもらえればと思います。

しおんじやま古墳学習館入館者推移データH17~H28学習館入館者数推移(単位:人)

古墳を楽しんでもらう~古墳学習館での様々な活動~

活動の紹介をする前に、まず指定管理者である「NPO法人楽古」の説明を簡単にしたいと思います。私は大学で考古学を学び、自治体で文化財調査や博物館の学芸員をしていたのですが、その時に体験学習の面白さを知り、文化財担当職員が少ない地域へも、歴史をテーマとした体験学習を提供する活動が必要ではないかと考え、友人たちと団体を設立しました。任意団体としては平成13年に設立し、平成15年に法人となりました。そして平成17年に指定管理者として、開館と同時に学習館を管理運営することになりました。そんな経緯だったので、学習館でも「体験」を活かした事業を中心に進めました。

【常設歴史体験コーナー・古墳クイズラリー】

まず常設の体験コーナーを設置しました。内容は勾玉作りや埴輪ストラップ作りなど、定番のメニューから、学習館のオリジナルのものまでいろいろあります。常設といっても、施設内に工作室がなかったので、ホールの一角に事務机を並べて無理矢理「体験コーナー」と言っているだけのスペースです。水道もトイレや屋外のものを使うという形で、冬は来館者の方にご迷惑をおかけしています。それでも常設の体験コーナーがある博物館は、まだまだ少ないので、歴史体験をするために遠くから来て下さる方もいます。

常設の体験コーナー常設歴史体験コーナー

また広い古墳を利用した「古墳探検クイズラリー」も実施しています。これは古墳や施設の各所に言葉を隠し、それらを集めてもらうというもの。言葉集めだけでなく、スタンプラリー・ガチャガチャなど、いろんな要素を取り入れて3~4ヶ月に1回程度内容を更新し、子どもたちに何回も来てもらえるように工夫しています。現在、第43弾を開催中です。

【月替わり体験メニュー】

また平成27年から常設の体験コーナーで「月替わり体験メニュー」を提供しています。1月に実施する「干支のミニ埴輪を作ろう」のような体験もあれば、古墳でひろったドングリを使った工作、夏の時期に古墳に生えて、私たちを困らせる葛のツルを利用したクリスマスリース作り(前方後円墳形のリースもあり)など、季節感のあるプログラムも提供して、人気となっています。

古墳クイズラリー古墳探検クイズラリー

クリスマスリース作り月替わり体験メニュー(クリスマスリース作り)

【しおんじやま学び場】

歴史を学ぶ機会の提供として、毎月第1土曜日に「しおんじやま学び場」という講演会も開催しています。「歴史講演会」だと難しく感じる方にも気軽に来てほしいと考えて、通常は90~120分程ある講演時間を、参加しやすい60分とし、講師の方にも専門用語ではなく、初心者でも分かりやすい内容をお願いしています。平成22年4月から開催し、現在で80回を越えました。地元の方を中心に、多少の増減はありますが、毎回20~40名ほどの参加者があり、人気の事業となっています。

 

学び場しおんじやま学び場

【商業施設でのPRイベント】

当館は八尾市でも東部の山麓地域にあり、市街地に住む人にとっては、用事がなければ行かない場所にあります。そこでもっと施設を知ってもらうため、平成24年から年に1回程度、市街地にある「アリオ八尾」というショッピングモールでPR イベントを開催しています。内容は、当館の体験メニューを提供したり、後で説明する当館キャラクターの登場などです。すぐに来館につながる訳ではありませんが、最近は「学校見学で行ったところや~」とか、「あのキャラクター知ってる」という声もあり、地道にPRできていると思います。

商業施設PRその1商業施設でのPR

商業施設PRその2商業施設でのPR

様々な連携と新たな魅力作り

当館での活動を進める上で、大切にしているのが「連携」です。小さな展示館では、人員はもちろん、得意な分野も限られてきます。またアイデアもかたよってきます。それらを補うのが連携です。次に当館の様々な連携活動と、新たな魅力を作る取り組みについて紹介します。

 

弥生文化博物館弥生文化博物館での出張講座

篠山チルドレンズミュージアム篠山チルドレンズミュージアムでの出張講座

【他の博物館との連携】

大阪府立弥生文化博物館や兵庫県篠山市にある篠山チルドレンズミュージアムなど、他の博物館のイベントに出張して当館の体験プログラムを実施したり、逆に当館のイベントに協力してもらったりしています。また様々な分野の小規模なミュージアムのネットワークである「小さいとこネット」にも参加しており、平成25年3月には、毎年1回開催している「小さいとこサミット」を当館で開催しました。小規模館同士の悩み事を共有したり、先進的な取り組みを知ることができ、活動の幅を広げることにつながっています。

小さいとこサミットチラシ小さいとこサミットチラシ

小さいとこサミット@八尾八尾でのサミットの様子

【セスナ機古墳ツアー】

八尾市には小型機専用の八尾空港があり、遊覧飛行がすでに実施されていたのですが、それを活用した当館イチオシの企画です。大阪府には「百舌鳥・古市古墳群」など巨大な前方後円墳がたくさんありますが、それらを上空から見学する内容で、地元の旅行会社と協力し、年1回程度20名ほどの定員で実施しています。午前中に八尾空港でフライトがあり、午後は地上から当館を見学してもらいます。昼食には、地元の懐石料理店が作った「古墳懐石弁当」を用意しています。前方後円墳形のご飯や勾玉や大刀の形をした野菜の煮物など、当館とのコラボレーションで作ったこだわりの弁当です。

 

八尾空港、古墳弁当、心合寺山古墳という八尾の素材で大阪の巨大古墳を満喫する企画で、費用は1人18,000円程で少し高額ですが、関東からの参加もあり、人気の企画となっています。今後は個人対応のプランを作り、もっとPRしていきたい活動です。

1121ses1セスナ機古墳ツアーチラシ

百舌鳥古墳群航空写真セスナ機からの古墳遊覧(百舌鳥古墳群)

【ハニワこうてい】

例年4~6月は歴史学習のため小学校6年生の見学がたくさんあります。これまでは、ワークシートを使って古墳のクイズに答えるという内容で好評だったのですが、もっと面白く印象に残る施設見学ができないかと考えて生み出されたのが、蓋形埴輪をモデルにした「ハニワこうてい」というキャラクターです。設定としては、心合寺山古墳を本拠地に、古墳や埴輪の魅力を世界に伝えることで世界征服を目指している「ハニワ帝国の皇帝」というもので、平成24年4月に初登場しました。

 

施設見学の冒頭で登場し、ワークシートの使い方や見学方法を説明した後、最後に再登場。解答や解説、質問コーナーをして終了となります。見た目が少々怖いのと、自ら話をして説明するという珍しさが好評で、新聞やテレビなどでも紹介されました。結果として、施設見学の件数はそれほど増えていないのですが…、影響はそれ以外の所に出てきました。

 

元々、学習館の活動については、ブログやSNSをつかって広報活動をしていましたが、それらをすべて、ハニワこうてい仕様に変更。そうすることで、遠方の方も興味を持つようになり、より多くの人にハニワ帝国=学習館の情報に接してもらえるようになったのです。

 

また八尾市には、公式キャラクターがいないこともあり、テレビや雑誌、イベントなど、様々な依頼が、八尾市役所を通して来るようになりました。商業施設や他の博物館、イベントでの活動の際にも、キャラクターをつかった方法は効果的で、当初は想像もしていなかった形で当館のPRに役立っています。

ハニワこうていハニワこうてい

ブログハニワこうていブログ

まとめ

ここまで、当館の様々な活動を紹介してきました。このように書くと、どれも成功しているように思えますが、決してそんなことはありません。内容は良くてもPR不足、内容自体に問題ありなど、成功とは言えない活動も数多くありました。それらを修正したり、中止したり、また他の施設のアイデアを参考にして新企画を作ったり、いろんな試行錯誤をすることでこれらの活動が生まれてきました。

 

小さな展示館の場合、職員も少ないため、臨機応変、即断即決で対応することができます。特に連携する時には、偶然訪れたチャンスや出会いを逃さないスピード感も必要なので、小さい施設の方が向いているのかもしれません。一見すると「小さい」ことが弱みになるかも知れない点を強みに変えているのだと思います。これからもいろんな失敗をすると思いますが、多くの方に「古墳ってやっぱりコーフンするよな。古墳サイコ~」って思って楽しんでもらえる、そんな「小さいな展示館」の活動を作っていきたいと思います。

今城塚古墳古墳フェス古墳フェス・はにコット

しおんじやまカードしおんじやまカード

実はこれ以外にも、大阪府高槻市の今城塚古墳で開催している「古墳フェス・はにコット」や、それと関連した阪急百貨店でのPRイベント、阪南大学国際観光学部 和泉研究室との共同企画、八尾の環境団体との「いきいき八尾環境フェスティバル」、オリジナルのミュージアムグッズ開発、体験した人に配布している「しおんじやまカード」、ハニワ貯金箱作りと「夏の体験まつり」などなど…いろんな連携企画、当館の取り組みがたくさんあります。もっと紹介したいのですが、当初の予定を超えた文字数になっていますので、今回はこれまでにしたいと思います。これらの活動については、当館の「ハニワこうていの世界征服ブログ」でも日々報告していますので、是非そちらもご覧ください!

 

次回は、岐阜県美濃加茂市 「みのかも文化の森/美濃加茂市民ミュージアム」さんをご紹介いただく予定です。

阪急百貨店イベント阪急百貨店でのPRイベント

◆◆◆八尾市立しおんじやま古墳学習館◆◆◆

〒581-0854 大阪府八尾市大竹5-143-2

TEL/FAX 072-941-3114

 

◆◆◆「ハニワこうていの世界征服ブログ」◆◆◆

https://ameblo.jp/haniwa-emperor/

 

※この報告は、福田和浩 2016「八尾市立しおんじやま古墳学習館の取り組み―巨大古墳のある小さなミュージアムの奮闘記録」『博物館研究 vol.51 No.7』公益財団法人日本博物館協会 をベースに加筆・修正したものです。

公開日:2018年2月9日最終更新日:2018年2月9日

福田 和浩八尾市立しおんじやま古墳学習館 館長
NPO法人歴史体験サポートセンター楽古 代表理事

大阪府南河内郡河南町出身。自治体での埋蔵文化財調査や博物館での学芸員の経験から、歴史体験学習の面白さを知り、様々な歴史体験を提供するNPOを設立。平成17年から指定管理者としてミュージアムの運営にも携わり、文化財の活用について日々模索を続けている。趣味は野球観戦と映画鑑賞。リーグ優勝から一番遠ざかっているチームが、いつか日本一になることを日々夢見ている。

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