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Vol.26

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特集7

尾道市(広島県) 日本遺産認定までの道のりとわがまちのストーリーの魅力

尾道市歴史文化まちづくり推進協議会
事務局:尾道市役所企画財務部文化振興課

pic26_04_01尾道水道と斜面地の景観。 提供:尾道市歴史文化まちづくり推進協議会

日本遺産認定まで

尾道市は、瀬戸内のほぼ中央、広島県の東南部に位置している。自然豊かな山地、多島美をもつ島嶼部、港や造船工場がある沿岸部などから成る南北に細長いまちである。山陽自動車道、瀬戸内しまなみ海道に加え、2015(平成27)年3月に全線開通した中国やまなみ街道など、交通・交流の重要な拠点としての機能が集約し、まさに「瀬戸内の十字路」となっている。

 

2008(平成20)年度から文化庁の文化財総合的把握モデル事業の選定を受け、2011(平成23)年3月にいわゆる文化財マスタープランとしての「尾道市歴史文化基本構想及び文化財保存活用計画」を策定した。そして2012(平成24)年3月には、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」(歴史まちづくり法)に基づく向こう10年間の具体的な事業計画である尾道市歴史的風致維持向上計画を策定し、同年6月に国の認可を受けた。

pic26_04_02尾道水道と斜面地の景観。 提供:尾道市歴史文化まちづくり推進協議会

「日本遺産(Japan Heritage)」は、2015(平成27)年度に文化庁が創設した制度であり、地域の歴史的魅力や特色を通じてわが国の文化・伝統を語るストーリーを認定するものである。日本遺産の認定申請にあたっては、歴史文化基本構想や歴史的風致維持向上計画を策定していることなどが条件であるが、尾道市がその条件を満たしていることと、日本遺産がストーリーや魅力溢れる文化財群を国内外へ戦略的に発信していくことにより地域の活性化を図ることを目的としていることから、認定に向けて取り組むこととした。

 

2014(平成26)年夏、ストーリーづくりの相談のために初めて文化庁を訪問して以来、数回に渡って文化庁の指導を受けながら、ストーリーのブラッシュアップに努めた。最も苦労したのは、尾道市は国宝、重要文化財などのさまざまな文化財を有している反面、ストーリーの中心を成すコアな建造物等がないことであった。最終的には、「尾道水道」と「中世」と「箱庭的都市」という三つのキーワードを中心にストーリーづくりを行い、2015(平成27)年4月24日、『尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市』というタイトルで、日本遺産に認定された。

尾道市のストーリー

ストーリーの概要は、「尾道三山と対岸の島に囲まれた尾道は、まちの中心を通る「海の川」とも言うべき尾道水道の恵みによって、中世の開港以来、瀬戸内随一の良港として繁栄し、人・もの・財が集積した。その結果、尾道三山と尾道水道の間の限られた生活空間に多くの寺社や庭園、住宅がつくられ、それらを結ぶ入り組んだ路地・坂道と共に中世から近代の趣を今に残す箱庭的都市が生み出された。迷路に迷い込んだかのような路地や、坂道を抜けた先に突如として広がる風景は、限られた空間ながらじつにさまざまな顔を見せ、今も昔も多くの人を惹きつけてやまない」という内容である。

 

前述のストーリーは、三つの柱から成る。一つ目は北前船の寄港地であった良好な港町を育んだ尾道水道、二つ目は中世の寺院建築が一番集積しているまちであること、三つ目は坂道や路地が尾道の生活基盤となっていることである。

 

自然の良港を持つ尾道は、平安時代の1169(嘉応元)年、備後大田荘(後、高野山領)公認の船津倉敷地、荘園米の積み出し港となって以来、対明貿易船や北前船、内海航行船の寄港地として、中世・近世を通じて繁栄を遂げた。港町・商都としての発展は各時代に豪商を生み、多くの神社仏閣の寄進造営が行われた。

 

尾道市は、中世(鎌倉〜室町時代)の寺院建築が日本一凝縮したまちである。また、戦災に遭っていないことから、国宝4点、重要文化財55点を有し、中心市街地には25の寺院がある。これらの社寺や住宅をつなぐ坂道や路地をたどると、目の前に突然、寺院の大きな屋根や庭園をもつ住宅が現れたり、斜面地には二階井戸をはじめとする生活に必要な井戸が点在するなど、坂道と路地に点在する井戸端が住民の集まる立体的な空間となっている。

 

ストーリーは、川のような海である尾道水道を船で進む光景から始まる。船からは、尾道水道と密集した寺院や神社、民家を含む斜面地との美しい景色を一望することができる。一望して全ての範囲が見渡せるほどの、箱庭のようなまちである。三つの山と尾道水道に挟まれた狭い市街地に中世の寺社や近代の建造物、そしてそこで行われる祭など、19の構成文化財が密集している。

pic26_04_03路地から見える尾道水道。 提供:尾道市歴史文化まちづくり推進協議会

pic26_04_04ベッチャー祭。 提供:尾道市歴史文化まちづくり推進協議会

そして、その構成文化財をつなぐ坂道と路地が、斜面地や港に不規則にめぐらされている。こうした坂道と路地を迷いながら歩く予測できない楽しさと、山と海とまちが一体となった不思議な空間を体験できることがストーリーの魅力である。ぜひ尾道市を訪れ、坂道と路地を実際に歩いて箱庭的都市を体感して欲しいと思う。まちの人々とも楽しい触れ合いがあるはずである。

pic26_04_05斜面地の坂道。 提供:尾道市歴史文化まちづくり推進協議会

今後の展開について

今回認定されたストーリーの中心を成すのが、尾道水道に面した港町として栄えた本市の歴史であり、2019(平成31)年には、尾道港が開港して850年という大きな節目を迎える。さらに2020(平成32)年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、「日本遺産のまち尾道」の魅力を国内外に広く発信するとともに、来訪者を気持ちよく受け入れる“おもてなし”の態勢を整える必要があると考えている。

 

具体的には、ポスターや総合パンフレット、イメージVTRを多国語で作成する総合情報発信事業や、来訪者に構成文化財の魅力を案内する文化遺産パートナー養成事業を実施。また、市民に日本遺産のストーリーや構成文化財を理解していただくためのシンポジウムや講座、ワークショップなどを開催し、尾道の魅力を広く伝えるとともに、構成文化財の詳細調査などを実施し、さらなる魅力向上に資するものにしたい。こうした日本遺産魅力発信推進事業を展開することにより、尾道のブランド力の強化を図り、広域的・国際的な交流を進め、地方創生につなげていきたいと考えている。

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