
vol.44
近代遺跡
2019(平成31)年におこなわれた品川駅の改良工事に伴い、我が国で最初の鉄道線路が敷設された高輪築堤跡が発見され、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。高輪築堤跡は旧新橋停車場跡に追加して異例の速さで国史跡に指定されたが、これまで近世・近代遺跡には明確な取扱指針がなかった問題が浮き彫りになった。 本特集では嚆矢となった高輪築堤をはじめ、近世・近代遺跡の調査事例の紹介とともに文化庁が示した取り扱いの考え方を解説し、あわせて近世・近代遺跡を考えるうえで必要な視点をご寄稿いただいた。 なお多くの課題が残る近世・近代遺跡の調査や取り扱いについて、議論の手がかりとなれば幸いである。
表紙タイトル:高輪築堤跡全景 (東京都)
明治5(1872)年に開業した新橋・横浜間の鉄道。この東アジア初の鉄道では海上の線路を列車が走るという世界でも珍しい光景がみられた。その線路の土台になっていたのが高輪築堤である。城郭の石垣の伝統工法と新しく西洋からもたらされた技術・資材が同居した、文明開化を象徴する史跡である。(提供:国際文化財株式会社)