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動向

日本遺産サミット in 岐阜

7月1日、岐阜市で「日本遺産サミット」が開催された。会場の長良川国際会議場では日本遺産に認定されている自治体、認定を目指している自治体のブースが軒を連ね、活発な地元のアピールを行っていた。当日の岐阜市は33度と暑くなったが、ブースは多くの人でごった返しており、日本遺産に対する関心の高さがうかがわれた。

日本遺産は地域内の文化資産を「ストーリー」でつなぎ、わかりやすいイメージにパッケージ化して発信するものである。地域活性化のために積極的に活用するという点が、保存中心だった従来の文化財行政と大きく異なる。サミットでは前半に昨年度認定された自治体の代表者が登壇し、認定前後の地域の取り組みついて紹介を行った。認定後の動向として観光入込客の増加を主張する自治体が多かったが、前年比プラス数パーセントという程度であり、効果と結論付けるには少々無理がある印象だった。そもそも始まって2年目の日本遺産に世界遺産登録のようなインパクトがないのは当然のことで、この制度のブランド化がこれから求められることだろう。サミット後半では、文化庁長官も含めての座談会が実施された。日本文化の可能性というテーマで意見が交わされ、日本遺産の方向性が垣間見えた。

日本遺産認定のハードルは決して低くない。世界遺産がダメなら日本遺産で、といった安直な考えは成り立たない。複数の文化資産を結ぶ立体的かつ魅力的なストーリーを描き出すという、これまであまり求められなかった要件を満たすことに頭をひねらなければならない。その意味で日本遺産制度は、文化財行政のターニングポイントになりうる可能性を持っている。