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動向

【イベント】リレートーク「海外から見た日本考古学の魅力」への招待

村上夏希・庄田慎矢

(独)国立文化財機構 奈良文化財研究所 国際遺跡研究室

私たちが開催しているオンライントークイベント『海外から見た日本考古学の魅力』について紹介します。

この企画は、日本考古学を研究する海外在住の研究者が、それぞれが考える日本考古学の魅力を日本国内の聴衆に向けて語る、というオンラインイベントです。リレー方式で全12名の研究者にお話しを頂きます。

 

なぜこのような企画をスタートさせたのか、その経緯を私たちの活動内容と合わせてお話しします。

国際遺跡研究室の活動

国際遺跡研究室は、奈文研やその他の関連機関が行う国際的な調査研究に関しての実施・調整・協力・情報収集を行うことを主な責務としています。具体的には、カンボジア・アンコール遺跡群西トップ遺跡の調査修復事業や、カザフスタンの文化財関連機関との学術交流があり、それ以外にもこれまでに様々な海外機関との共同事業展開してきました(※1)。

コロナ禍での気づき

そんな私たちの活動に緊急事態が起きました。新型コロナウイルスの世界的な流行です。これによって皆さんの生活も大きく変わったことと思いますが、「国際」を冠する私たち国際遺跡研究室も、全く海外に渡航せずに各種の「国際」交流事業を展開せざるを得ないという事態になりました。私たち自身、これほど長い間、日本に留まることは初めての経験でした。

 

しかし、悲嘆にくれてばかりいるわけにもいきません。与えられた環境の中で最善をつくして目的を達成するための任務を遂行することが、私たちの責務です。国内にとどまらざるを得ないというこの状況を逆手にとり、むしろ国内に積極的に目を向けて、日本の文化財や考古学の魅力を改めて見つめ直したいと考えました。

 

一方で、日本を訪問したくてウズウズしている、日本の考古学を愛する世界各地の研究者からは、日本での経験を懐かしみ、一刻も早い再訪を望む声を数多く聞きました。私たち日本人が日本考古学の魅力を再発見していくうえで、彼ら・彼女らこそは、最も教えを乞うべき存在と言えます。日本にいる私たちの気づきと、海外にいる彼ら・彼女らの声から誕生したのが、リレートーク・イベント『海外から見た日本考古学の魅力』です。

より多くの参加希望者に対応するため、第2回目以降はYouTubeライブでの配信も開始。

リレートークに込めた思い

第1回のスピーカー、Hudson先生(右上)Kaner先生(右下)から次のスピーカー、羽生先生(左下)へリレーのバトンをつなぐ庄田(左上)

今回の企画を開催するにあたり、「日本語で」「日本の聴衆に向けて」お話を頂ける方々に相談したところ、瞬く間に賛同者が集まり、気が付くと通年のシリーズを開催できる運びとなりました。ぜひ、日本の皆さんには、普段とは異なる視点から見た日本考古学の魅力について、感じて頂ければと思います。

 

そして、全6回の講演会を通じて、参加者のみなさん一人一人が、いろいろな思いを分かち合いながら、それぞれに新たな発見をしていただけたら、これに越す喜びはありません。本企画が日本の文化財をめぐる海外との交流を一層深める場になればと願っております。

 

 

最後になりますが、講演をお引き受け頂いた演者の方々に、厚く御礼申し上げます。

≪イベント詳細≫

  • 第1回 2021年5月17日 17:00-18:30
  • Simon Kaner:セインズベリー日本藝術研究所所長
  • 『奈良からノリッチへ:日本考古学への英国的まなざし』
  • Mark Hudson:マックス・プランク人類史科学研究所 研究員
  • 『宮古島長墓遺跡の調査からみた日本考古学』
  • 第2回 2021年7月30日 13:30-15:00
  • Junko Habu:カリフォルニア大学バークレー校教授
  • 『学際的研究からみた景観利用の歴史的連続性とその変化』
  • Marjorie Burge:コロラド大学ボルダー校助教授
  • 『考古学的文学研究のために』
  • 第3回 2021年9月17日 17:00-18:30
  • Ilona Bausch: ライデン大学
  • 『縄文社会、宗教と交換』
  • Amanda Gomes:北海道大学
  • 『モノから人へ:考古学と地域社会の関係性』
  • 第4回 2021年11月1日 17:00-18:30
  • Diana Nukushina:リスボン大学
  • 『縄文貝塚の魅力:西ヨーロッパからの視点』
  • Britta Stein:マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク校
  • 『日本考古学の魅力:ドイツの考古学者の経験と印象』
  • 第5回 2022年1月14日 10: 00-11:30
  • Joseph Ryan:岡山大学大学院特任助教
  • 『鉄器研究から見た日本考古学』
  • Scott Lyons:カリフォルニア大学バークレー校
  • 『分析が明かす昔の鍛冶』
  • 第6回 2022年3月9日 17:00-18:30
  • Enrico R.Crema:ケンブリッジ大学上級講師
  • 『時間と集落と人口の考古学』
  • Gina Barnes:英国ダラム大学名誉教授
  • 『埴輪・勾玉・冠・直弧文の魅力』

■申し込み

奈良文化財研究所 国際遺跡研究室 専用フォーム

https://req.qubo.jp/nabunken/form/BqmEvdRN

 

■配信方法

ZOOMウェビナー・YouTubeライブ

詳細は申し込み後メールで

 

■問い合わせ

奈良文化財研究所 国際遺跡研究室

担当:村上

murakami-n33★nich.go.jp(★を@に変えて送信)

【文末注記】

※1:なぶんけんブログ「巡訪研究室(8)企画調整部 国際遺跡研究室」 https://www.nabunken.go.jp/nabunkenblog/2020/02/junpou08.html


【文化遺産の世界にて公開中★庄田慎矢★考古学の新しい研究法「考古生化学: Biomolecular Archaeology」シリーズ】

1-考古生化学とは何か-(https://www.isan-no-sekai.jp/report/2078)

2-土器残存脂質分析-(https://www.isan-no-sekai.jp/report/2084)

3 -ZooMS(質量分析計を用いた動物考古学)-(https://www.isan-no-sekai.jp/report/3589)

4 -歯石と口腔微生物叢-(https://www.isan-no-sekai.jp/report/4241)

村上夏希・庄田慎矢(独)国立文化財機構 奈良文化財研究所 国際遺跡研究室

村上夏希:企画調整部国際遺跡研究室 アソシエイトフェロー/土器や陶磁器など焼き物の自然科学的研究を様々な分析技術を用いて行っています。出土遺物を対象に私たちの生活スタイルや食と密接に関連している焼き物の一生(製作・使用・廃棄)を追うことによって、過去の生活文化の復元を行いたいと考えています。また、得られた情報を文化財の保存修復にも役立てていきたいです。

庄田慎矢:企画調整部国際遺跡研究室長/先史時代以来、日本を含めた東北アジア地域が、ユーラシア大陸で醸成された農耕・金属器・仏教・都城制などの様々な文化やしくみを受け入れながら、どのような独自の歴史的変遷をたどったのか、考古学の立場から復元を試みています。また、様々な自然科学的手法の考古学的適用と、それによって考古学的思考がどう変わるのかを、日々考えています。最近は、ユーラシア大陸東部における食文化の歴史を、主に考古生化学の方法を用いて研究しています。